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昨年末(2015年)に発足したASEAN経済共同体(AEC)

ASEAN経済共同体(ASEAN Economic Community)について実は、経済産業省のHPが分かりやすく解説してくれています。

経済産業省の上記URLに書かれている内容を見れば、ASEANは、1967年にベトナム戦争を背景に、東南アジアの政治的安定、経済成長促進等を目的に設立され、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイで設立されて、その後1984年にブルネイ、1995年にベトナム、1997年にラオスミャンマー、1999年にカンボジアが加盟し、現在では10か国が加盟し、総人口6億人、名目GDPは1.8兆ドル、一人当たり名目GDPは3,107ドル、域内総貿易額は2.1兆ドルに上ると書かれています。
そして、個別には、人口は最大のインドネシアの2.3億人から最小のブルネイの40万人、一人当たりGDPは最大のシンガポールの43,159ドルからミャンマーの702ドル、と多様性がうかがえるとあります。(インドネシアの人口は昨今、2.5億人と言われていますし、経済の成長が著しかったので、現在は少し変わっていると思います)
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そして、2003年の首脳会議で、経済共同体、政治・安全保障共同体、社会・文化共同体の3つで構成するASEAN共同体を設立する事で合意しました。経済共同体は、ASEAN共同体の一部として、加盟10カ国が単一市場と生産基地の構築を目指して包括的に経済連携をする仕組みです。その真意はアジア通貨危機や中国の台頭によりASEANの地位が相対的に低下、外国からの投資が減る事を懸念して、投資を呼び込むと言うものです(なので、当初は2020年に発足を予定していたが、2007年の首脳会談で2015年に前倒しとなった)。経済共同体に向けて、ASEANは、下の表にある様な4つの大きな柱に向けて、推進しています。
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では、昨年末に実際に発足して、何かが変わったのか?と言われれば、何も変わっていないです。これは、加盟国間の経済格差や政治体制の相違から、コンセンサスを重視した『緩やかな』連合体を目指してきており、2008年から徐々に統合準備の整った措置から実行に移してきたためだそうです。EUと比べれば、単一通貨無し、域外共通関税もありませんので、EPA経済連携協定)に近いものです。

また、昨今では南シナ海問題での意見の相違が顕著化するなど、結束を揺るがす局面もあり、共同体は安全保障分野も含んでいるので、対立が進むと骨抜きになる懸念を孕んでいます。2012年、外相会合で南シナ海問題に係る対立が生じました。ASEAN創設以来、初めて共同声明が出せない事態となり、マルティ外相が収拾に奔走して南シナ海に関しては基本原則に限定して声明を出すと言う事で解決を図りました。昨年に就任したジョコ大統領は外交下手なのか、ASEANなどの対外的なものには関心がない様に見えます。(中国はよく分かっている様です。某国の大統領は就任後の外遊で北京に行った後、なんだか親中路線になってる気がするのは私だけでしょうか?中国らしい強かさで、この部分だけを切り取れば、では流石の安倍首相も形勢不利に見えてしまいます。)また、来年の議長国は小国、ラオス。まとめ役として、イニシアチブを発揮できるのかと言う、不安がありますし、日米が結んだTPPもマレーシア、シンガポールブルネイベトナムが加盟しており、ASEANの結束を揺るがしかねません。TPPについては、インドネシアのジョコ大統領は、まだ先なんだから、気にすんな!と仰ってますが、産業界はそうは行きません。しかし、TPPの自由化のハードルは高いので、確かにまだまだ先でしょうけれど。

AECの目標達成に向けての進捗状況は実は、そんなに悪くはありません。
ASEAN事務局内のASEAN統合監視事務局(AIMO) が進捗状況をモニタリングをしているAECの統合工程表「ブループリント 」なるものがあり、その中での措置は合計で611措置です。その中から優先的に取り組むとされている措置は501措置です。その進捗(昨年11月時点)を見ると次の様になります。

AEC ブループリント措置の進捗状況(2015 年 10 月末時点)
全措置数  完全実施  実施未了   実施率
  611          486          125           79.5%
優先措置  完全実施  実施未了   実施率
  506         469             37          92.7% 

優先処置の内訳は、次の通りです。
                                                    措置数  完全実施  実施未了  実施率
  1)単一の市場と生産基地             277          256           21        92.4%
  2)競争力のある地域                    170          154           16        92.6%
  3)公平な経済発展                        n.a           n.a.             0        100%
  4)グローバルな経済への統合      n.a.          n.a.             0        100%

しかし、問題は間違いなくあります。と言うか、問題が生じないプロジェクトなんて、あり得ないので当たり前です。要はそれが余りに多くてグダグダなのか、キッチリと解決できるレベルなのか?という事ですね。

その一つは経済格差です。
先進国とされているシンガポールカンボジアでは依然、52倍もの経済格差が存在します。経済産業省多様性と表現していますが、これを埋めることは限りなく困難だと思います。所得の低い側へは労務費などの安さから生産移転が進む(既に進んでます)でしょうけれど、一方で豊かな国に呑み込まれると言う不安が付きまといます。インドネシアでは産業が逃げて行ったり、安い労働力に仕事を奪われると言う懸念を隠していません。昨今、イミグレーション関係が厳しくなったのも、この影響と睨んでいます。また、昨年には外国人労働者排斥デモもありました。コレは、外国人と言うより、中国人労働者排斥だった様ですが。(就労を伴う、312VISAを取得する場合、生命保険の証書を提出するのは、所得が少ない労働者の出稼ぎじゃない事を証明する意味があります。日本人に求めなくても良いじゃないって思いますけれど)

そして、非関税障壁です。上記に関連するものと思います。
自国規格を義務付けて、ハードルを高くする事で、関税撤廃の効果を薄めてしまう様な動きです。この様な障壁を無くそうとしていますが、これについての具体的な数値目標はありません。これまでの統合作業では2015年1月時点で、実に撤廃率は96%で、2018年までに完全に撤廃される見込みとの事で、評価に値すると思います。しかし、非関税障壁・措置と言われる、輸入規制や煩雑な輸出入手続きなどが残っており、人の移動面で、熟練労働者の移動自由化は限定的です。インドネシアでは、実際に保護主義的な措置の動きもあります。

これらの問題がもっと拡大すれば、チョット面倒になります。既に日系企業ASEANに多額の投資をしていますが、リスクになってしまわない様、日本政府の支援などに期待したいですね。