インドネシア2016年 第一四半期の経済成長率と直接投資推計

今週、インドネシア中央銀行が発表した内容は経済的にかなり良い兆しがありました。

先ず、3月のインフレ率は前月比で0.19%、前年同月比4.45%でしたが、4月では前月比▲0.33%にとどまるとの見通しだと言う事です。ここで生活している私達も大いに助かります。

これは、食料価格が安定したことや、レギュラー・ガソリンと軽油の値下げとこれに伴うタクシーやバスなどの公共交通機関の運賃引き下げが要因だと言う事です。これに呼応して消費が伸びてくれれば、カネがぐるぐると回り始めて景気も回復するというものですね。期待したいと思います。ただ、今年は6月がラマダーンに当たりますので、6月が断食月となり、7月初旬に断食明け大祭(レバラン)を迎えますが、例年この時期は消費が活発になる反面、物価が上昇します。日本のお正月と思って頂ければ良いと思います。新たな年に向け、何かと新調したり、田舎へのお土産を買ったりと、何かと物入りな時期になります。日本と異なるのは物価が覿面に上がる部分ですね、高くても買うから(^^;;  実質、あとひと月も過ぎれば物価は上昇すると思われますので、この指標は推移を見守る必要があります。とは言え、この指標は通年での傾向がどうかと言う見方で良いと思います。

次にインドネシアの第1四半期の実質GDP成長率が前年同期比で5.1〜5.2%であったと言う推計を発表しています。前の四半期である、2015年第4四半期は5.04%であったので、GDPは回復の方向と考えられます。これは政府支出による効果で、中銀以外に経済調整省も政府の資本支出だけでなく民間消費も伸びているとしています。中銀は次の四半期である4〜6月には更に成長率は伸び、前年同期比で5.2〜5.3%へ加速すると予測しているそうです。以前の記事で今年の成長率予測として世銀は5.1%、IMFは4.9%と書きました。私個人的には昨年と同等=4.8%台では?と言う事で。民間消費が伸びているなら、私の予想は間違っているかも知れません。面目無い(ーー;)  あとは、IMFの指摘の様に、国際的なコモディティ価格の低迷や貿易相手国の需要がどうなるか?だと思います。

昨年は政府支出が遅れて問題となっていましたから、今年は改善されている様です。一方で、仕事や生活している中ではまだ、実感はありません。おそらく、建築やインフラ整備の関連分野が先行し、徐々に広まってくるのではないでしょうか。その理由は次の様な報道です。

インドネシア投資調整庁(BKPM)が、今週月曜に発表した、今年第一四半期の国内外資本による直接投資実績は146兆5000億ルピア(約1兆2300億円)でした。これは、実に前年同期比で17.6%増で、9.1%増に設定された通年目標=595兆ルピアの約25%です。第一四半期で1/4の達成率となっている訳ですから順調と判断できます。

主な投資の内訳は、次の通りです。
1. 外国投資(PMA)=96兆1000億ルピア(72.8億ドル)、17.1%増
  国別
  1位:シンガポール(28億6000万ドル)
  2位:日本(15億9000万ドル)→前年同期は12億1000万ドルで前年同期も2位だった
  3位:香港(5億1000万ドル)
  4位:中国(4億6000万ドル)
  5位:旧宗主国であるオランダ(2億7000万ドル)

 分野別
  紙・紙製品・印刷:19億ドル
  基礎化学・化学品・医薬品:9億5000万ドル
  輸送機:8億3000万ドル
  基礎金属・金属品・機械・電気製品:7億ドル
  食品:4億7000万ドル

 投資地域別
  南スマトラ:18億9000万ドル
  西ジャワ:16億2000万ドル
  バンテン:9億ドル
  ジャカルタ:5億5000万ドル
  中スラウェシ:3億4000万ドル 
西ジャワ、バンテン、ジャカルタジャカルタとその周辺ですから、やはり外資の投資はジャカルタとその近郊が多いという事でしょう。

2.国内投資(PMDN)=50兆4000億ルピア(38.2億ドル)、18.6%増
 分野別
  食品:8兆9000億ルピア
  食用作物・農園:8兆8000億ルピア
  基礎化学・ 化学品・医薬品:5兆7000億ルピア
  電気・ガス・水道:5兆1000億ルピア
  運輸・倉庫・通信:4兆9000億 ルピア

 投資地域別
  東ジャワ:13兆ルピア
  中カリマンタン:6兆3000億ルピア
  西ジャワ:6兆1000億ルピア
  中ジャワ:5兆3000億ルピア
  バンテン:4兆3000億ルピア
国内資本の場合、第二の都市、スラバヤが所在する東ジャワに集中している様ですね。これは、ある意味で我々にはヒントかも知れません。

そして、全国を五つに分けた場合の、地域別内外資の直接投資実績内訳
ジャワ・バリ:82兆9000億ルピア(56.6%)
スマトラ:33兆ルピア(22.5%)
カリマンタン:16兆ルピア(10.9%)
スラウェシ:8兆6000億ルピア(5.9%)
ヌサトゥンガラ・マルク・パプア:6兆ルピア(4.1%)
となっており、ジャワとバリが過半数を占めます。ジャワとジャワ以外の地域に分けた場合、ジャワ島は55.1%、ジャワ以外は44.9%で、やはりジャワ島が圧倒的であると言えます。だから地域格差も広がるのだと思います。しかし、ジャワ島以外の地域への直接投資は前年同期では43.9%であったので、徐々に拡大しつつあるのかも知れません。

少し、脱線しますが、インドネシア中央統計局データによると、所得格差を示すジニ係数(1.0が最大で、格差が最も大きく、0.4を超えれば社会不安が発生するとされています)は2015年3月時点で0.41でしたが、9月では0.40だったとの事で、0.01ポイント改善されたそうです。農村部では3月と9月では横ばいであったそうですが、都市部では0.43から0.42へとなったそうで、都市部での改善が見られた様です。この様に見れば、ジョコ政権も少しずつ、経済成長や格差などへの対応を進めている事が分かります。なんたって、G20メンバー国ですからね(^◇^;)  しかし、正直に言うと、地元の皆さんの声とは食い違っているのが気になります。何かのカラクリがあるかも知れませんが、時間があれば調べてみたいと思います。

話を戻します。経済成長の件を中銀統計などをこまめにチェックしているメンバーにしてみたのですが、「そうであれば、良いですね。」と言われました。何故、そんな表現なの?と聞くと、「ある報道では、政府発表の数値と実態がマッチしていないという事でした。実際に私も実感できていないですからね。」とコメントしてくれました。成る程、そういう事かと。しかし、彼には「経済効果は直ぐには出ないものだから、傾向をよく見る必要があるからね。また、本当に景気が回復するなら、またインフレが問題となって、それはそれで新たな悩みのタネになるだろう。私達は引き続きモニターしよう。」と返し、私達の仕事の分野のマーケットの話題に変えました。世界全体の経済が減速している今、予測は難しいですね。でも、政権は安定してきましたし、外的なインパクトがなければ、回復はして行けそうにも思います。問題はその外的な要因ですけれど。第二四半期が過ぎた頃には明らかになるのではないでしょうか?