TPPにインドネシアが参加すると、どうなるか

ジョコ・ウィドド大統領は昨年10月26日にオバマ米大統領と会談した後で、環太平洋連携協定(TPP)に参加する意向を表明しました。東南アジア最大の経済規模と世界第4位の人口で、TPPに参加すれば、アジアの貿易、外交関係は大きく変わるでしょう。

ジョコ大統領はホワイトハウスで「インドネシアは開かれた経済、TPPに参加するつもりだ」と言ったそうです。この方、少し前までは、そんなのは先の話だから気にするなと仰っていました。なぜ、掌返ししたのでしょう。外資規制を続けるインドネシアは、これまでASEAN経済共同体(AEC)を重視し、AECだけでも自国産業がダメになると警戒し、非関税障壁を作り回っている様に見えるのですが。高水準の自由化が求められるTPPに本気で参加するのでしょうか?

グダグダしているインドネシアを横目にベトナムなどが参加し、TPPが実現に動きだしました。インドネシアも掌返しで参加する事にして、規制を見直す様です。それは無視出来ないメリットがあるからです。TPPでは、TPPに参加する以前の段階でさえ、TPP域内国の製品を主要貿易相手国に無税で輸出できると言うメリットがありますので、参加表明しただけで、企業の投資が増えると言う可能性があります。

それはさておき、インドネシアとオーストラリアの政府間協力機関 「オーストラリア・インドネシア経済ガバナンス・プログラム(AIPEG)」の試算が昨年に報道されていました。インドネシアTPPに参加した場合、繊維と履物を中心に製造業全体に輸出拡大効果があり、輸出を年29億ドル押し上げる効果があるとしています。また、輸出先国での関税免除により、年13億ドルの関税支出軽減と言う効果も期待できるのだとか。背反で、インドネシアは資源国でありながら原材料を輸入に頼っており、原材料と資本財を主として輸入が年38億ドル増えてしまう可能性もあります。そして、これら全体を含んで試算すれば、結果としてTPPに参加した場合、TPP参加国との貿易規模は拡大し、年間260億ドルに達するそうです。

一方で、インドネシアが参加しない場合、TPP参加国の貿易相手国変更で(インドネシアからの輸入が実に従来の50%まで減っていたケースもあるそうですが)、年3億0600万ドルを失い、TPP参加国との貿易規模も年200億ドルに縮小すると試算しています。また、TPPでは相互に原材料の供給を優先する方針が盛り込まれているためインドネシアTPPに参加しなければ原材料の確保が難しくなる事も考えられ、トマス・レンボン貿易相によれば、「インドネシアの製造業で原材料の輸入を必要としない産業は一つもなく、輸入が5%減っただけでも操業継続が不可能」なのだそうです。何と脆弱な(^^;;

この様に、総合して見ればTPP参加のメリットは大きく、不参加のデメリットが大きいのですから、インドネシアからすれば、選択の余地はないでしょう。何かと中国に近づく姿勢を見せるジョコ大統領ですが今後、旗色をどの様にするのか一定の興味を感じます。まさかバランサー外交なんて言わないだろうと信じたいですが。余談ですが、私としてはインドネシアが中国を重要視している理由が(わかる気もしますが)分かりません。怖いのか、カネなのか?

話を戻します。
この様に、選択の余地はないTPPですが、インドネシアTPPを有効活用するためには課題があるとされています。それは、エネルギーや物流のコスト上昇、生産性向上を伴わない労働者の賃金上昇などの問題解決などで、競争力を高める必要があるとされている様です。私個人としてもおそらく、その通りだと、思います。

特に、ここで働いている私の場合、生産性向上を伴わない労働者の賃金上昇と言うのが本当に苦々しく感じます。これは労働者だけでなく、中央/地方 政府自身が労働者の言ったもん勝ち的な要求を後押しするかの如く政令を変える部分も含みます。尤も、これは日本人には無い発想が根底にある様です。もっと、ニュースをみたり、新聞を読んだり、自己啓発などをしてくれればいいのですがね。まともや頭の良い人も多数いる事が救いです。