アジア開発銀行はインドネシア経済成長予測を引き下げ

ADB、アジア開発銀行は今年3月に今年のインドネシア経済の成長率の見通しを5.2%としていました。しかし、今月27日に発行した『2016年アジア経済見通し改定版』の中で0.2%減の5.0%へと、0.2ポイント下方修正しています。また、来年の見通しも5.5%から5.1%に引き下げており、その理由は、政府、民間を含めた投資の伸びが想定を下回ったという事だそうです。

昨年の成長率は4.79%で、私個人としては3月19日に書いた記事で昨年並みでは?としていたのですが、そこまで悪くはないという事でしょうか?確かに租税恩赦=タックス・アムネスティはここに来て動き始めたと言う報道もあります。ADBの分析では、「今年も経済は健全なペースを維持しており国内の経済改革が効果を発揮し、先進国経済が上向けば、来年成長は拡大する」と指摘しています。

また、今年のインフレ率見通しは3.5%としており、従来予想の4.5%から大幅に引き下げていますが、この予測は過去16年間で最低だとの事です。そして来年のインフレ率見通しは、燃料や食料の国際価格上昇が見込まれることから4.0%になるという事です。このインフレ率の低下や最低賃金上昇によって個人消費は伸びを維持、更には政府が村落地基金に従来より高い予算配分をしたことなどから地方での所得も上昇すると予想。公共投資については、インフラ投資は 今年下半期に加速することが見込まれるものの、歳入の落ち込みが全体を下押しするとしています。

そして、成長へのリスク要因としては、政府の予算削減とインフラ事業の遅れ/労働市場の弱さに伴う消費者信頼感の減少/不安定な国際金融市場が経常赤字などの拡大につながる可能性と言うものを挙げています。

私は、『政府の予算削減とインフラ事業の遅れ』に注目しています。私個人的には、「政府が村落地基金に従来より高い予算配分をしたことなどから地方での所得も上昇する」という事自体は否定しませんが、期待する程ではないと思っています。既に、政府は地方に大きく予算を割いていますが、効果的に予算は消化されていません。貯金している様なものです。何故か?残念ながら、使い方を知らない様に見えます。依然、汚職もあり、再分配が機能していない様に見えます。

それだけでなく、ADBは「先進国経済が上向けば、来年成長は拡大する」としていますが、先進国の経済が上向きます?(^_^;) 益々、不透明感を深める様に見えます(^◇^;)

また、ADBは労働市場の弱さについて、都市部の高学歴層で賃金水準が停滞しており、大卒者が適切な職に就けない雇用のミスマッチも発生しているとし、国内賃金の低さから、いい人材ほど海外に流出しているとしていますが、これも大きな問題です。私としては、違う面で問題視しています。私は国内賃金は低いとは思っていません。大卒者が適切な職に就けないのではなく、労働生産性が極めて低いのに高給を要求するからアンマッチになるだけです。大卒だから優秀と言うのは幻想に過ぎません。ただ、一般的に大卒の方が優秀な可能性が高いだけです。極めて優秀な人材にとっては国内の賃金水準は低いのかも知れませんが、そんな人材にはなかなか、出会えないのが実態です。本当に問題なら、政治屋共が労働者を甘やかす事をやめろと言いたいのが本音です(^◇^;)  本当に無知なのか分かりませんが、労働者も政治家も企業のカネは無尽蔵、まるで打出の小槌の様に思っているのではないかと勘ぐってしまう程です(^_^;) そして、悩ましいのは、政府が税収拡大を目的に施行する租税恩赦=タックス・アムネスティが経済に与える影響は「おそらくGDPの0.3%から0.5%分寄与するものの、経済全体で見れば大きな影響はない」としている事です。だから来年の経済成長見通しを5.1%にしているのでしょうけれど(^_^;)

私は本当にインドネシアの労働者達にに分かって欲しいのは、自ら懸命に働いてこそ所得が上がるという事で、労働争議で駄々を捏ねたら所得が上がるのではないという事です。企業のカネをくすねて平気な顔をしているモラルの低さや、理由を作ってサボるなどと言う行為は恥ずかしい事だと分かって欲しいと思います。開発の父と言われるスハルト政権下で腐敗が進み、現在も頻繁に知事や大臣が逮捕されている現状から見ても指導層から治さねばならないと思いますが、まだまだ本当の民主主義は定着しなさそうです。

私はいつも思うのですが、政治と経済は密接に関係しており、経済を無視した政治は経済を崩壊させます。また、経済学は政治と言う変数を考慮しない様に見えます。経済を見通すには、政治や国民性などをある係数として加味しないと誤るのではないかと思います。