汚職事件からの回収金とインドネシアの経済格差の拡大(東アジア最速!?)
インドネシアの汚職専門の特捜=汚職撲滅委員会(KPK=Komisi Pemberantasan Korupsi)が今週明らかにしたのが、「2016年の中でKPKの活躍によって回収された汚職などによる国家損失」です。結果は4976億Rp(約43億7千万円)だったとのことです。2015年の回収は2119億Rpだったそうですので、これは2.4倍くらいとなります。頑張ってますね、KPK。
回収した分は、汚職撲滅委員会だけに、自分のポケットには入れず、国庫に納付された様です(税外収入という名目だそうです)。めでたしめでたし・・・? 全部見つかって、摘発されている訳ではないですから、良かったと締め括れないのが本音です(^▽^;)
回収金の内訳
汚職事件の押収金 490億Rp
汚職事件の賠償金 571億Rp
など。
KPKが2016年に行った刑事事件手続き
事件受理が96件
贈収賄 79件
物品・サービス調達関連汚職 14件
マネーロンダリング 3件
事件処理 99件
起訴 77件
犯人の身元毎の件数
民間 26件
国会・地方議会 23件
政府機関 10件
地方首長 8件
など。
人口的に圧倒的に多数を占める筈の民間は26件で、3割程度にも関わらず、7割くらいはお役人様というか公的機関や立場のお方ですね。と言うか、民間も事件となったのはこの程度と言うだけで、取るに足らない小さなものなら無数にあると言う事ですので、結局は、上から下まで腐敗が侵食していると考えるべきなのでしょう。これだけ常態化すれば、罪の意識なくやってしまっていると言う人もいるかも知れません。回収金43.7億円を2.5億の国民数で割れば、国民一人当たり年間で17.5円分配できます。たった17.5円と思いますが、この手の犯罪は、ほんの氷山の一角です。回収できた金額の10倍なんかではとても収まらない位の汚職がある筈です。つまり、汚職の部分を公平に分配すれば国民所得の向上に寄与できる筈です。今のままでは、正直者がバカを見るという、そのまんまの状況だと思います。
しかし、全員が悪い訳でもないのも事実です。我々外国人はこんなことがあると言う前提で、注意深く観察すると言う事かと思います。
私自身の周囲でも、小悪党の様な者は把握しており、余りに酷い者は相応の処分にしますが、極端ではない者については、更生の機会を待っています(^▽^;) 罪の意識がないんですよね。面倒くさいので、時には焼け野原にしてやろうかと思う事もありますけれど、我慢です。
一方で、話題を変えますが、世界銀行によればインドネシアでは約2億人=約2.5億人の人口なので、国民の約8割が貧困ラインとなる月収約33万8000ルピア(約2870円)の下層に位置しており、上位10%にあたる富裕層との格差が拡大しつつあると報告したそうです。上位10%の富裕層は、所得増加ペースでも年間消費でも下位40%の貧困層に対して何と3倍であったとか!
また、慢性的な問題ですが、都市と地方の成長格差も絶賛拡大中で、衛生施設を利用できない環境にある子供の割合は首都ジャカルタ=6%に対し、東部パプア州の一部では98%!(;´・ω・) そりゃ、医者行くより呪術師を呼びますよね、病院が無いんですから(;^ω^)
その他にも、世銀は経済的な格差を示すジニ係数(0~1までの数字で表すもので、数値が大きいほど格差が大きく、一般に0.4こ超えると社会不安となると言われる)について、インドネシアでは2000年の0.3から2014年には過去最高水準の0.41まで上昇したと指摘しているそうです。また、富裕層への富の集中が加速したことで、インドネシアの経済的な不平等は、「東アジア地域の国々のなかで最も速いペースで拡大している」との事です。
こんな状況も汚職を生み出す背景になっていると思います。また国民の不満が高まってしまえば暴動にも繋がりかねません。98年の暴動で罪なく殺されたり暴行されたり資産を強奪されたりと言う、華人の子供や女性の悲劇を繰り返してはなりません、絶対に。日本人の大半は無事に脱出できましたが、多少なりとも損害は受けていますし、飛行機を待つ為、数日を空港で過ごした幼い子供もいます。ジャカルタ日本人学校では何故、泊まりの用意をしているか、ご存知でしょうか?今や学校の先生も理由を知らない方が多い様ですが。過去の悲劇は、憎むためではなく、将来への知恵として語り継ぐべきだと思います。・・・11月の大規模デモの際のジャカルタ日本人学校の対応は拙かったと批判されている様ですね。一応、私は子供に何かあれば、直ぐに救出に行ける準備だけはしておきましたけれど(^▽^;)